【韓国発】『ドバイチョコ』が日本上陸!ザクザク食感の正体と韓国での熱狂ぶりを徹底解剖

チョコレートの硬質なシェルが鋭い音を立てて割れ、中から濃厚なピスタチオクリームがとろけ出します。耳には心地よい「ザクザク」という咀嚼音が響きます。

これは単なる菓子ではなく、ドバイで生まれ、韓国のソーシャルメディアによって世界的な熱狂へと増幅された文化的アーティファクト、ドバイチョコレートの体験です。その魅力は、芸術的に彩られた外観と、滑らかなチョコレート、とろりとしたクリーム、そして最大の特徴であるクリスピーな「カダイフ」という食感のコントラストにあります。

この記事では、このドバイチョコレート現象の全貌を解き明かします。ドバイの工房で生まれた一粒のチョコレートが、いかにして韓国を震源地とする世界的ブームへと発展したのか、その軌跡を詳細に追います。

タップできる目次

ドバイチョコの起源|本家「Fix」の誕生秘話

この世界的トレンドの揺りかごは、ドバイに拠点を置く「Fix Dessert Chocolatier」という一軒のショコラティエです。創設者サラ・ハムダ氏が、妊娠中に中東の伝統的なデザートであるクナーファを無性に食べたくなったことから、このチョコレートは着想を得ました。

オリジナルの構成要素|ザクザク食感の正体

本物のドバイチョコレートを定義づけるのは、その独特な素材の組み合わせです。最大の特徴である「ザクザク音」の源は、「カダイフ」(またはクナーファ)と呼ばれる食材です。

カダイフは「天使の髪」とも呼ばれる、フィロ生地を細かく麺状にしたものです。これをバターで香ばしく炒めることで、他に類を見ないクリスピーな食感を生み出します。

中には高品質のピスタチオペーストと、ゴマのペーストであるタヒニを使用しています。これにより、豊かでナッツの風味が強く、複雑な味わいを実現しています。これらを高品質なクーベルチュールチョコレートで包み、しばしば芸術的なデザインが施されます。

バイラルヒットの火種と希少性

トレンドに火をつけたのは、2023年12月にエミラティ(UAE国籍)のインフルエンサー、マリア・ヴェヘラ氏が投稿した一本の動画でした。その視覚的な魅力、チョコレートが割れる満足感のある音、そしてインフルエンサーの純粋な反応が組み合わさり、感覚的な体験の共有として拡散しました。

オリジナルの製品を手に入れることは極めて困難です。ドバイでのみ入手が許され、毎日オンラインで数分間だけ販売され、即座に完売します。この意図的に作り出されたかのような希少性が、世界的な渇望を煽る重要な要素となりました。

韓国が震源地!ドバイチョコ熱狂の構造

チョコレートはドバイで生まれましたが、その「現象」は韓国で作られたと言っても過言ではありません。韓国は強力なトレンド発信地であり、国内での関心が瞬く間に世界的な熱狂へと拡大する力を持っています。

なぜ韓国で爆発的に流行したのか

このトレンドは、韓国のソーシャルメディアプラットフォームに完璧に適応していました。美しいビジュアルはInstagramで注目を集め、特徴的な「ザクザク」という咀嚼音はTikTokやYouTubeのASMRやモッパン(食べる放送)コンテンツにとって理想的な素材となったからです。

インフルエンサーや大衆文化で流行しているものを自分も追いかけるという韓国の消費者トレンド「ディット消費(Ditto Consumption)」が、このブームを後押ししました。ドバイチョコレートを食べるという共有体験に参加したいという欲求が、強力な動機となったのです。当初、韓国内での入手が困難だったため、ポップアップストアやコンビニでは開店前から行列ができる「オープンラン」現象が発生しました。

入手困難が生んだ「自作」ムーブメント

オリジナルが入手困難であったため、次に現れたのが自家製レシピのトレンドでした。YouTubeには作り方のチュートリアル動画が溢れ、これがカダイフやピスタチオペーストといった原材料の需要を韓国内で急増させる結果となりました。

この一連の動きは、韓国でのブームが単にチョコレートの味だけでなく、それを手に入れ、SNSで共有し、さらには自ら作るという「参加型」の文化体験としての価値によって駆動されていたことを示しています。ドバイチョコレートを手に入れること自体が、個人のトレンドへの感度の高さを示す一種の「ソーシャルカレンシー(社会的資本)」となったのです。

韓国ソウルの実食比較|専門店VSコンビニ

韓国市場はこのトレンドを二極化させました。一つは本物志向の消費者のための高品質で高価な「体験」、もう一つは大衆のための低価格で手軽な「象徴」です。

職人技が光るソウルの高級専門店

ソウルでは、本物または高品質なドバイチョコレート体験を求める消費者のために、職人技と高品質な原材料にこだわる専門店が人気を博しています。私が注目しているのは、こうした専門店がオリジナルの味を忠実に再現、あるいは独自に昇華させている点です。

中東デザート専門店の「Temiz」や、ショコラティエが手がける「Treetobar」などが代表的です。これらは本物のカダイフや高品質なピスタチオバターを使用し、需要を管理するために時間を決めて販売するほどの人気ぶりです。

店舗名エリア主な特徴価格帯 (KRW)
Temiz (테미즈)松坡区 (ソンパグ)最も本格的、中東デザート専門店9,900前後
Treetobar (트리투바)鐘路区 (チョンノグ)ショコラティエ作、オンライン注文可10,000前後
0527 Chocolate (영오이칠)松坡区 (ソンパグ)最も芸術的、宝石のようなハート型9,000前後
nibbles (니블스)江南区 (カンナムグ)一口サイズ、ギフトに最適14,000 (4個)

コンビニ戦略と「本物との乖離」

一方で、このトレンドを誰もが手軽に体験できるようにしたのがコンビニエンスストアの存在です。ただし、それはしばしば品質を犠牲にすることで成り立っていました。

CUは最も早く「ドバイスタイルチョコレート」を発売しましたが、パーム油ベースの「準チョコレート」の使用、本物のピスタチオの代わりに緑色の着色料、カダイフの代わりに揚げた「そうめん」を使用していることで批判を浴びました。それでも熱狂的な需要により、初期ロット20万個は1日で完売しました。(後にCUは本物のカダイフを使用した改良版を発売しています)。

チェーン商品名価格 (KRW)主な原材料(代替品に注意)消費者の評価概要
CUドバイスタイルチョコレート4,000準チョコレート、揚げ乾麺「本物とは別物」との酷評が多い
GS25ドバイカダイフ&ピスタチオ5,500ダークチョコレート、カダイフ(中国製)チョコの質が低いとの意見
7-Elevenドバイカダイフチョコレート6,800ミルクチョコレート、本物のカダイフコンビニ品では比較的好評
Daisoドバイカダイフピスタチオチョコ2,000準チョコレート、カダイフ価格相応の品質

コンビニ版に対するレビューは失望感を表明するものが多く、バイラルで理想化されたイメージと、大量生産された現実との間に大きな「本物との乖離(オーセンティシティ・ギャップ)」が存在することを示しています。

止まらない進化|ドバイチョコ・ユニバースの拡大

韓国の現象で最もダイナミックな側面は、その迅速な革新と適応力です。「チョコレート+ピスタチオ+ザクザク食感」という中心概念が、多種多様なデザートに応用されました。

チョコバーを超えた多様なデザート展開

このブームは、もはや板チョコだけの話ではありません。韓国のカフェやベーカリーは、この人気の組み合わせを使い、まったく新しいスイーツを生み出しています。

特に画期的だったのが「ドバイ餅 (ドゥバイ チャプサルトク)」です。フルーツ大福の人気店が生み出したこの商品は、餅のもちもちした食感と、中のザクザクしたフィリングの組み合わせを求めて長蛇の列ができました。

韓国で人気の進化系スイーツ一覧

ドバイ餅の他にも、フィナンシェ、クッキー、プリン、カヌレなど、想像力豊かな進化系スイーツが次々と登場し、ベストセラーとなっています。

デザートの種類代表的な店舗エリアアレンジの特徴
餅 (Mochi)ハン・ジョンソン城東区 (ソンスドン)柔らかい餅の中にザクザクのフィリング
フィナンシェWall Street Financier城東区 (ソンスドン)フィナンシェの上部にドバイトッピング
クッキーAll the Ugly Cookie麻浦区 (マポグ)しっとりクッキー生地にドバイフィリング
プリンMellow Street冠岳区 (クァナクク)プリンの中にカダイフの層を追加
カヌレPatisserie Decle瑞草区 (ソチョグ)カヌレの中にドバイフィリングを注入

日本での入手方法ガイド|カルディやドンキを調査

この熱狂の波はいよいよ日本にも本格的に上陸しました。日本の消費者がドバイチョコレートを入手するための実用的なガイドを提供します。

実店舗での購入スポット|カルディ・ドンキ・ウエルシア

現在、カルディコーヒーファーム、ドン・キホーテ、ウエルシアといった店舗が、輸入された「ドバイスタイル」チョコレートを販売する主要な拠点として確認されています。これらは主に韓国のコンビニタイプに近い製品や、日本のドウシシャなどがライセンス製造した商品が中心です。

東京のコリアンタウンである新大久保の「OKUDO」や「K-foods」といった専門輸入食品店では、異なる種類の製品や、店舗独自の高品質なバージョンが提供されることもあります。

オンラインでの購入先と価格比較

Qoo10、Yahoo!ショッピング、楽天市場などのオンラインマーケットプレイスでは、膨大な種類の商品が販売されています。韓国からの輸入品、中国から発送される製品、日本の販売者が製造した製品など、品質と価格には大きなばらつきがあるため、購入時にはレビューの確認が重要です。

輸入品にはプレミアム価格が上乗せされていることがわかります。

販売店/プラットフォーム形態入手可能な製品タイプ標準的な価格帯 (JPY)
カルディコーヒーファーム実店舗輸入品(ドウシシャなど)598前後
ドン・キホーテ実店舗輸入品600 – 1,000
ウエルシア実店舗輸入品(ドウシシャなど)626前後
新大久保の専門店 (OKUDOなど)実店舗オリジナル製品、輸入品500 – 1,100
Qoo10オンライン韓国コンビニ版、その他輸入品750 – 3,500
Yahoo!ショッピング/楽天市場オンライン輸入品、日本国内製造品1,500 – 3,000

トレンドの未来と市場への影響

このトレンドは、世界規模で具体的な経済的影響をもたらしています。特にピスタチオとカダイフの需要と価格を高騰させました。

ピスタチオ高騰と転売市場の発生

ソーシャルメディアトレンドが世界的なサプライチェーンに影響を与えた好例です。同時に、韓国や日本のフリマアプリでは、定価を大幅に上回る価格で取引される活発な転売市場が生まれました。

これは、製品が単なる消費財ではなく、希少価値を持つヴェブレン財としての地位を確立したことを示しています。この動きを受け、韓国企業がオリジナルのFixチョコレートや他の中東ブランドとの独占輸入契約を締結するなど、トレンドが安定した市場カテゴリーへと成熟しつつある動きも見られます。

一過性の流行か、定番スイーツへの道か

このトレンドの寿命は、過去の韓国の食ブーム、例えばタンフル(フルーツ飴)と比較されることが多いです。安価な模倣品に対する初期の爆発的な熱狂は薄れるかもしれません。

しかし、「ピスタチオ+ザクザク食感+チョコレート」という中心的な味の組み合わせは、デザート市場に永続的なニッチを切り開いたと私は分析しています。高品質な専門店版や公式輸入品が持続可能なプレミアムカテゴリーを形成し、餅やフィナンシェといった多様なデザートへの進化が、単発の製品よりも長い寿命を示唆しています。

まとめ

ドバイチョコレートの物語は、単なる菓子の話にとどまりません。それは現代文化の速度、デジタル時代における感覚的体験の力、そして世界のトレンドを生み出す中心的エンジンとしての韓国の揺るぎない地位を物語っています。シンプルなチョコレート、ピスタチオ、カダイフの組み合わせが、文化交流、経済的混乱、そして世界的な共有体験の媒体となりました。この軌跡は、21世紀の消費文化を理解するための貴重なケーススタディと言えるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
タップできる目次